「もとより」という言葉を見かけて、「どういう意味?」「自分で使うなら、どんな例文になる?」と迷ったことはないでしょうか。
「もとより」には、大きく分けて「初めから・以前から」と「言うまでもなく・もちろん」という2つの意味があります。
たとえば、「そのことはもとより知っていた」なら「以前から知っていた」、「日本国内はもとより、海外でも人気がある」なら「日本国内はもちろん、海外でも人気がある」という意味です。
意味によって使い方が異なるため、例文と一緒に覚えると理解しやすくなります。
この記事では、「もとより」の意味や使い方を例文とともにわかりやすく解説します。「〜はもとより」の使い方や、「もちろん」「もともと」との違い、漢字表記、古文での意味についても紹介します。
「もとより」の意味は「初めから」と「言うまでもなく」の2つ

「もとより」は、主に次の2つの意味で使われる言葉です。
| 意味 | わかりやすい言い換え | 例 |
|---|---|---|
| 初めから・以前から | もともと、最初から | その危険性はもとより承知していた |
| 言うまでもなく | もちろん、当然 | 国内はもとより、海外でも知られている |
辞書でも、「初めから・以前から」と「言うまでもなく・もちろん」という意味が示されています。
同じ「もとより」でも、文章によって意味が変わることがポイントです。
「初めから・以前から」という意味
1つ目は、「初めから」「以前から」「もともと」という意味です。
何かを後から知ったり考えたりしたのではなく、最初の時点ですでにそうだったことを表します。
例文:
「計画に多少の変更が必要になることは、もとより覚悟していました。」
この場合は、「変更が必要になる可能性を初めから覚悟していた」という意味です。
ほかにも、
「彼の実力については、もとより高く評価していた。」
とすれば、「以前から高く評価していた」という意味になります。
「言うまでもなく・もちろん」という意味
2つ目は、「言うまでもなく」「もちろん」という意味です。
すでに当然だと考えられることを示したうえで、さらに別の情報を付け加えるときによく使われます。
例文:
「この商品は若い世代はもとより、幅広い年代から支持されています。」
これは、「若い世代に支持されているのはもちろん、それ以外の年代にも支持されている」という意味です。
特に「Aはもとより、Bも〜」という形で使われることが多く、少し硬くフォーマルな印象を与えます。
「もとより」の使い方と例文
「もとより」の意味を理解したら、実際の文章でどのように使われるのかを確認してみましょう。
「初めから」という意味と「もちろん」という意味では、文章の作り方が少し異なります。
「初めから・以前から」の意味で使う例文
「初めから」「以前から」という意味では、ある事実をすでに知っていた場合や、最初から覚悟・予定・予想していた場合などに使えます。
例文:
「その問題については、もとより承知しています。」
「成功までに時間がかかることは、もとより分かっていました。」
「今回の計画には、もとより反対するつもりはありませんでした。」
「彼の能力は、もとより高く評価していました。」
「簡単に結果が出ないことは、もとより覚悟のうえです。」
どの例文でも、「後からそうなったのではなく、最初からそうだった」というニュアンスが含まれています。
「言うまでもなく・もちろん」の意味で使う例文
「もちろん」という意味では、「AだけではなくBも」と範囲を広げる文章でよく使われます。
例文:
「この施設は子どもはもとより、大人も楽しめます。」
「彼は英語はもとより、中国語も話せます。」
「この商品は国内はもとより、海外でも高く評価されています。」
「健康のためには運動はもとより、食生活にも気を配ることが大切です。」
「仕事では知識はもとより、相手への配慮も欠かせません。」
前半に当然と思われることを置き、後半でさらに情報を加えると、「もとより」の特徴が伝わりやすくなります。
ビジネスで使える「もとより」の例文
「もとより」は日常会話よりも硬い印象があるため、ビジネス文書やメール、スピーチなどとも相性のよい表現です。
たとえば次のように使えます。
「品質の向上はもとより、サービス体制の充実にも努めてまいります。」
「既存のお客様はもとより、新規のお客様にもご満足いただける商品を目指します。」
「安全性はもとより、使いやすさにも十分配慮しております。」
「社員の能力向上はもとより、働きやすい職場環境の整備も重要です。」
「今回の課題については、もとより認識しておりました。」
特に会社案内や報告書、プレゼンなどでは、「もちろん」より落ち着いた印象を与えたい場合に使いやすいでしょう。
「〜はもとより」の意味と使い方

「もとより」を覚えるうえで重要なのが、「〜はもとより」という形です。
「Aはもとより、Bも〜」とすると、「Aは当然として、それだけではなくBも」という意味になります。
日本語文法としても、「あることは当然として、ほかのことについても同じことがいえる」という使い方があり、「〜はもちろん」より硬い表現です。
「Aはもとより、Bも〜」が基本形
基本的な形は、
「Aはもとより、Bも〜」
です。
たとえば、
「彼女は料理はもとより、お菓子作りも得意です。」
という文章なら、「料理が得意なのはもちろん、お菓子作りも得意」という意味になります。
「日本国内はもとより、海外でも知られています。」
なら、「日本国内だけではなく、海外にも広く知られている」という意味です。
後半では「も」「にも」「でも」などを使って、対象を広げる文章がよく見られます。
「〜はもとより」を使った例文
使い方をさらに確認してみましょう。
「この図書館は学生はもとより、地域住民にも利用されています。」
「彼は営業力はもとより、企画力にも優れています。」
「この作品は国内はもとより、海外でも注目されています。」
「旅行では費用はもとより、安全面についても確認しておきましょう。」
「商品の性能はもとより、購入後のサポートも重視されています。」
ポイントは、前半と後半に関連性のある内容を置くことです。
「Aは当然として、さらにBについても同じことがいえる」という流れにすると、自然な文章になります。
「もとより」は文頭でも使える?文章中での位置を解説
「もとより」は、文頭でも文中でも使用できます。
ただし、置く場所によって文章の意味や形が変わります。
文頭で「もとより」を使う場合
文頭で使う場合は、「初めから」「もともと」という意味になりやすいです。
例:
「もとより、簡単に成功できるとは考えていません。」
「もとより、その可能性については理解していました。」
「もとより、彼に責任がないことは分かっています。」
このような使い方では、「最初からそう考えていた」というニュアンスが強くなります。
文中で「もとより」を使う場合
文中では、
「そのことは、もとより承知しています。」
のように副詞として使う方法があります。
また、
「日本はもとより、海外でも人気があります。」
のように「〜はもとより」という形でも使えます。
同じ言葉でも、「初めから」という意味なのか、「もちろん」という意味なのかは前後の文章から判断することが大切です。
「もとより〜ない」の使い方と例文
「もとより」は否定表現と組み合わせることもできます。
「もとより〜ない」という特別な一つの文型があるというより、「初めから」という意味の「もとより」に否定表現が続く形です。
例文:
「彼に頼るつもりは、もとよりありません。」
「簡単に解決できるとは、もとより考えていませんでした。」
「責任から逃げるつもりなど、もとよりありません。」
「最初から期待していない」という意味なら、
「その計画がすぐに成功するとは、もとより期待していませんでした。」
と表現できます。
「最初の時点から〜ではない」ということを強調したいときに使いやすい表現です。
「もとより」と「もちろん」の違い

「もとより」と「もちろん」は、どちらも「言うまでもなく」という意味で使えるため、よく似ています。
しかし、すべての文章で置き換えられるわけではありません。
「〜はもとより」と「〜はもちろん」は意味が近い
次の2つを比べてみましょう。
「英語はもとより、中国語も話せます。」
「英語はもちろん、中国語も話せます。」
この場合、どちらも「英語だけでなく、中国語も話せる」という意味になります。
「〜はもとより」は「〜はもちろん」より硬い表現です。
日常会話なら「もちろん」、文章やフォーマルな場面なら「もとより」がなじみやすいでしょう。
「初めから」の意味では「もちろん」に置き換えられない
注意したいのが、「もとより」が「初めから」という意味の場合です。
「その危険性はもとより承知していた。」
は、
「その危険性は初めから承知していた。」
という意味です。
これを、
「その危険性はもちろん承知していた。」
にすると、「当然承知していた」という意味に変わります。
つまり、「初めから」という時間的な意味を表す「もとより」は、「もちろん」と単純に置き換えることはできません。
「もとより」と「もともと」の違い

「もとより」と「もともと」も、「初めから」という意味ではよく似ています。
たとえば、
「その事情はもとより知っていました。」
「その事情はもともと知っていました。」
は、どちらも「以前から知っていた」という意味として使えます。
ただし、「もともと」のほうが日常会話で使いやすく、「もとより」はやや硬い印象があります。
また、「もとより」には「言うまでもなく・もちろん」という意味がありますが、「もともと」には基本的にこの使い方はありません。
そのため、
「国内はもとより、海外でも人気がある。」
を、
「国内はもともと、海外でも人気がある。」
と置き換えると、意味が不自然になります。
「初めから」という意味なら置き換えられることがありますが、「〜はもとより」の形では区別して考えると分かりやすいでしょう。
「もとより」の類義語・言い換え表現
「もとより」の言い換えは、どちらの意味で使っているかによって変わります。
| 表現 | 主な意味 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| もともと | 初めから | 日常会話 |
| 初めから | 最初の時点から | 幅広い文章・会話 |
| 元来 | 本来・もともと | やや硬い文章 |
| 以前から | 前の時点から | 時間を明確にしたい場合 |
| もちろん | 言うまでもなく | 日常会話 |
| 当然 | 当たり前である | 判断を示す場合 |
| 言うまでもなく | 説明する必要もない | 文章・説明 |
| 無論 | もちろん | 硬めの文章 |
辞書でも、「もとより」の意味によって「もともと・元来」などと、「もちろん・当然」などの異なる類語が挙げられています。
そのため、「もとより=当然」や「もとより=もともと」と一つだけ覚えるのではなく、文脈によって言い換えを選ぶことが重要です。
「もとより」の漢字は?「元より・固より・素より」との関係
「もとより」は漢字では「元より」と書くことができます。
辞書には、
「元より」
「固より」
「素より」
という表記が掲載されています。
ただ、現代の文章では無理に漢字にせず、「もとより」とひらがなで書いても問題ありません。
読みやすさを重視するブログ記事や一般向けの文章であれば、「もとより」と書くと意味が伝わりやすいでしょう。
「元より」と「もとより」はどちらを使えばいい?
意味を分かりやすく伝えることを優先するなら、ひらがなの「もとより」が使いやすい表記です。
「元より」も辞書に掲載される正式な表記なので、漢字で書きたい場合はこちらを選択できます。
一方、「固より」「素より」も「もとより」と読みますが、読みを知らない人には伝わりにくい可能性があります。
一般向けの文章では、「もとより」または「元より」と覚えておけば十分でしょう。
古文で使われる「もとより」の意味
「もとより」は現代になって生まれた言葉ではなく、古い日本語にも見られる表現です。
辞書には、『伊勢物語』や『土左日記』などの古典に「もとより」の用例があり、「昔から・初めから・以前から」「本質的に・元来」などの意味で使われてきたことが示されています。
古文では「初めから・以前から・元来」と考える
古文の文章で「もとより」が出てきた場合は、まず、
「もともと」
「初めから」
「以前から」
「元来」
などに置き換えて意味が通るか確認すると理解しやすくなります。
文脈によっては「もちろん・言うまでもなく」という意味になる場合もあるため、前後の文章から判断する必要があります。
古文の「もとより」を現代語にすると?
たとえば古文で、
「もとより知りたること」
というような表現があれば、現代語では、
「以前から知っていること」
「もともと知っていること」
と考えることができます。
「もとより」という言葉そのものは現代でも使われているため、古文特有のまったく別の言葉というわけではありません。
「もとより」を使うときの注意点

意味として正しくても、場面によっては「もとより」が不自然に聞こえることがあります。
特に会話で使う場合は、文章全体の硬さを意識しましょう。
日常会話ではやや硬い表現
「もとより」は、普段の会話では少し硬い印象があります。
友人との会話で、
「そのことはもとより知っていたよ。」
と言っても間違いではありませんが、
「そのことはもともと知っていたよ。」
のほうが自然に感じられる場面は多いでしょう。
「〜はもとより」も、「〜はもちろん」とすると日常的で柔らかな表現になります。
「もとより」自体は敬語ではない
「もとより」はフォーマルな印象がある言葉ですが、「もとより」そのものが敬語というわけではありません。
目上の人や取引先に使う場合は、
「もとより承知しております。」
「品質はもとより、安全性にも配慮しております。」
のように、周囲の言葉を適切な敬語にします。
「硬い言葉=敬語」と考えないよう注意しましょう。
多用すると文章が硬くなりやすい
「もとより」を何度も使うと、文章全体が必要以上に硬く感じられることがあります。
特に一般向けの記事や日常的な文章では、「もちろん」「もともと」「初めから」なども使いながら表現を調整すると読みやすくなります。
「もとより」を使った不自然な例文・誤用
次のような文章には注意が必要です。
不自然な例:
「彼は英語はもとより、料理も得意です。」
「〜はもとより」は、前半の当然・代表的な内容に対して、関連する情報を後半に広げると自然です。
英語と料理では話題の性質が離れているため、この場合は、
「彼は英語が得意なだけでなく、料理も得意です。」
としたほうが自然です。
一方、
「彼は英語はもとより、中国語も得意です。」
であれば、どちらも語学能力について述べているため、まとまりのある文章になります。
「もとより」を英語で表現すると?
「もとより」を英語にするときは、日本語の意味によって表現を変える必要があります。
「初めから」という意味なら、
「from the beginning」
「from the start」
「originally」
などが候補になります。
一方、「言うまでもなく・もちろん」という意味なら、
「of course」
「needless to say」
などで表現できます。
また、
「日本国内はもとより、海外でも人気があります。」
のような文章では、
「not only A but also B」
の形を使って「AだけでなくBも」と表現することもできます。
つまり、「もとより=of course」と一つだけ覚えるのではなく、日本語でどちらの意味になっているかを確認してから英訳することが大切です。
「もとより」に対義語はある?
「もとより」には2つの意味があるため、すべての場面に使える一つの対義語を決めるのは難しい言葉です。
「初めから」という意味なら、文脈によって、
「途中から」
「後から」
などが反対の意味になります。
「当然・言うまでもなく」という意味であれば、
「意外にも」
「予想外に」
などが反対方向の意味を表すことがあります。
そのため、「もとよりの対義語」を探す場合は、文章の中でどの意味として使われているかを先に確認しましょう。
子どもにもわかる「もとより」の意味
「もとより」は、簡単にいうと、
「はじめから」
または、
「もちろん」
という意味の言葉です。
たとえば、
「ぼくはそのことを、もとより知っていた。」
なら、
「ぼくはそのことを、はじめから知っていた。」
という意味になります。
「この遊園地は子どもはもとより、大人も楽しめる。」
なら、
「子どもはもちろん、大人も楽しめる。」
という意味です。
少し硬い言葉なので、普段の会話では「もともと」や「もちろん」に言い換えると分かりやすいでしょう。
「もとより」の意味と使い方・例文まとめ
「もとより」には、大きく分けて「初めから・以前から」と「言うまでもなく・もちろん」という2つの意味があります。
「そのことはもとより知っていた」と言えば「以前から知っていた」という意味です。
一方、
「国内はもとより、海外でも人気がある。」
なら、「国内はもちろん、海外でも人気がある」という意味になります。
また、「Aはもとより、Bも〜」は、「Aは当然として、それだけでなくBも」という意味で使われる代表的な形です。
「もとより」は「もちろん」や「もともと」と似ていますが、すべて置き換えられるわけではありません。
「初めから」の意味なら「もともと」、「言うまでもなく」の意味なら「もちろん」と言い換えられることが多いと覚えると、使い分けやすくなります。
書き言葉やビジネスでは使いやすい一方、日常会話では少し硬く聞こえる場合があります。文章の相手や場面に合わせて、「もちろん」「もともと」「初めから」などと使い分けてみてください。

